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過去問演習

CFP®資格審査試験 2023年度第2回
リスクと保険
問題34

過失割合のない事故の自動車保険の対物賠償責任保険金と車両保険金

〈典型問題〉自動車保険の約款と保険金

本問は、自動車保険について、約款を読み取り、対物賠償保険金と車両保険金の額を計算する問題である。

算出手順表

対物賠償保険金の算出
算式の各項の算出 各項の額
法律上の損害
賠償責任の額
相手車両の損害額(修理費用) 70万円
相手車両の保険価額(時価額) 50万円
自分側の過失割合 100%
50万円 × 100% = 50万円
50万円
第5条①から⑤
までの費用
損害防止費用 7万円 7万円
代位取得する
ものの価額
なし 0円
免責金額 3万円 3万円
対物賠償保険金
(条項§1)
対物保険金額(無制限)を限度 54万円
対物超過修理
費用保険金
(特約§4(1))
対物超過修理費用 70万円 - 50万円 = 20万円
20万円 × (50万円/50万円) = 20万円
1台につき50万円を限度
20万円
支払い責任保険金 74万円
車両保険金の算出
算式の各項の算出 各項の額
区分の判定 車両保険金額 180万円
車両保険価額 180万円
「分損」かつ「車両保険金額が車両保険価額以上」
修理費 損害額(修理費用) 35万円 35万円
部分品の交換に
よる価額の増加額
なし 0円
残存物の価額 なし 0円
損害の額
(条項§6②)
35万円
免責金額
(特約§2)
車両保険の免責金額は5万円
免責ゼロ特約を適用し、免責金額は0円
0円
支払保険金の額
(条項§5(1))
車両保険価額(180万円)を限度 35万円

対物賠償保険金と車両保険金の合計額 74万円 + 35万円 = 109万円

解説

設問から必要な情報を読み取りつつ、算出手順表に沿って保険金の額を求める。

〔1〕対物賠償保険金の算出

対物賠償責任条項第4条(1)に示された算式に沿って、計算に必要な金額を求めていく。

「被保険者が負担する法律上の損害賠償責任の額」
 相手車両の損害額(修理費用)は70万円である。これは相手車両の時価額50万円を超えているため、損害額は50万円となる。
 〈資料1〉より、自身の過失割合は100%であるから、法律上の損害賠償責任の額は 50万円 × 100% = 50万円

「第5条(費用)①から⑤までの費用」
 〈資料1〉〈資料2〉より、損害防止費用が7万円

「損害賠償金を支払ったことにより代位取得するものがある場合は、その価額」
 〈条件〉の記載より、0円

「免責金額の記載がある場合は、その免責金額」
 〈条件〉の記載より、対物賠償責任保険の免責金額は、3万円

以上を算式に代入して、対物賠償保険金は
 50万円 + 7万円 - 0円 - 3万円 = 54万円。これは対物保険金額(無制限)の限度内である。

〔2〕対物超過修理費用保険金の算出

対物超過修理費用特約が付帯されているため、その適用により、対物超過修理費用保険金が支払われる。特約第4条(1)に示された算式に沿って、保険金の額を求める。

「対物超過修理費用」
 相手車両の損害額(修理費用)から相手車両時価額を差し引いて求める。
 70万円 - 50万円 = 20万円

「相手自動車の価額について被保険者が負担する法律上の損害賠償責任の額」 50万円

「相手自動車の価額」 50万円

以上を算式に代入して、対物超過修理費用保険金は
 20万円 × (50万円/50万円) = 20万円。これは限度額(50万円)の範囲内である。

以上より、特約も含めた対物賠償保険金の合計額は
 54万円 + 20万円 = 74万円 …(1)

〔3〕車両保険金の算出:区分の判定

車両条項第5条(1)により、支払保険金の計算に関する区分を判定する。

〈資料1〉より、「②分損の場合」に該当する。
〈条件〉より、車両保険金額は180万円、車両保険価額は180万円であるから、「車両保険金額が保険価額以上の場合」に該当する。

〔4〕車両保険金の算出:損害額の算出

車両条項第6条②に示された算式に従って、損害の額を求める。

「修理費の額」
 自身の車両の損害額(修理費用)は、35万円

「修理に際し部分品を交換したために発生した増加額」
 〈資料1〉より、0円

「修理に伴う残存物の価額」
 〈資料1〉より、0円

以上を算式に代入して、損害の額は
 35万円 - 0円 - 0円 = 35万円

〔5〕車両保険金の算出:支払保険金の額の算出

「免責金額の記載がある場合は、その免責金額」
 〈条件〉の記載より、車両保険の免責金額は、5万円。

車対車事故免責ゼロ特約が付帯されているため、その適用を検討する。

本件事故は特約第2条①に該当するため、差し引かれる免責金額は、0円となる。

以上を算式に代入して、支払保険金の額は
 35万円 - 0円 = 35万円 …(2)。これは車両保険価額(180万円)の限度内である。

〔6〕保険金の合計額

対物賠償保険金と車両保険金の合計額は、
 (1) + (2) = 109万円

正解 3