本問は、自賠責保険支払基準を読み取り、死亡による損害額を計算する問題である。
算出手順表
葬儀費 | 支払基準 第4-1 | 100万円 |
逸失利益 | 支払基準 第4-2 ( 560万円 - 196万円 ) × 19.600 = 7134.4万円 |
7134.4万円 |
死亡本人 の慰謝料 |
支払基準 第4-3 | 400万円 |
遺族の 慰謝料 |
支払基準 第4-4 650万円 + 200万円 = 850万円 |
850万円 |
100万円 + 7134.4万円 + 400万円 + 850万円 = 8484.4万円 → 8485万円
解説
死亡による損害は、葬儀費、逸失利益、死亡本人の慰謝料、遺族の慰謝料とされている(支払基準 第4)。
それぞれを計算して合計する。
〔1〕葬儀費の算出
葬儀費は、100万円 … (1) である(支払基準 第4-1)。
〔2〕逸失利益の算出
「逸失利益は、(……)年間収入額又は年相当額から本人の生活費を控除した額に(……)就労可能年数のライプニッツ係数(……)を乗じて算出する。」(支払基準 第4-2-(1))
死亡本人には「全年齢平均給与額(平均月額)の年相当額を得られる蓋然性が認められる」(設問文より)ため、ただし書きには該当しない。
逸失利益 = { (収入額) - (生活費) } × ライプニッツ係数
死亡本人は会社員であり「①有職者」に該当する(支払い基準 第4-2-(1)-①)。また、ただし書きのア、イ、ウのいずれにも該当しない。
事故前1年間の収入額は、560万円 である(〈条件〉より)。
年齢別平均給与額(【別表Ⅳ】)の年相当額は、411,400円 × 12月 = 493.68万円 である。
「いずれか高い額を収入額とする」(支払い基準 第4-2-(1)-①)ので、収入額は 560万円 となる。
生活費は立証困難である(〈条件〉より)。
「生活費の立証が困難な場合、被扶養者がいるときは年間収入額又は年相当額から35%を(……)生活費として控除する」(支払基準 第4-2-(3))
生活費は、560万円 × 35% = 196万円 となる。
就労可能年数は30年であり、ライプニッツ係数は 19.600 である(【別表Ⅱ-1】)。
よって、逸失利益は、( 560万円 - 196万円 ) × 19.600 = 7134.4万円 … (2) となる。
〔3〕死亡本人の慰謝料の算出
死亡本人の慰謝料は、400万円 … (3) である(支払基準 第4-3)。
〔4〕遺族の慰謝料の算出
慰謝料の請求権者は2人(妻と子ども)であり、慰謝料の額は650万円となる(支払基準 第4-4)。
また、「被扶養者がいるとき」に該当するため、200万円が加算される(支払基準 第4-4)。
よって、遺族の慰謝料は 650万円 + 200万円 = 850万円 … (4)となる。
〔5〕死亡による損害額の算出
以上より、死亡による損害額は、 (1) + (2) + (3) + (4) = 8484.4万円 であり、万円未満を切り上げて、8485万円 となる。