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過去問演習

CFP®資格審査試験 2023年度第1回
タックスプランニング
問題46

減価償却費の損金不算入

〈典型問題〉減価償却費の損金不算入

本問は、法人税額の計算上、減価償却費のうち損金不算入とするべき金額を計算する問題である。

算出手順表

減価償却費の損金不算入(中小企業者)
項目 器具備品①(電子計算機) 器具備品②(冷暖房用機器)
償却方法 × 耐用年数 → 償却率 定率法 × 4年
0.500
定率法 × 6年
0.333
取得価額 @189千円 × 数量15
= 2,835千円
250千円
当期供用月数 1か月 12か月
当期償却費 @189千円 × 数量15
= 2,835千円
250千円
特例の
選択可否
少額資産
(取得価額10万円未満)
× ×
3年一括償却
(取得価額20万円未満)
×
中小企業者の特例
(取得価額30万円未満)
適用可能な少額資産の取得価額の合計は、限度額3,000千円を超過している
個別償却
の試算
損金算入限度額 @189千円 × 0.500 × (1月/12月)
= @7.875千円
250千円 × 0.333 × (12月/12月)
= 83.25千円
損金不算入額 @189千円 - @7.875千円
= @181.125千円 … (1)
250千円 - 83.25千円
= 166.75千円 … (2)
3年一括償却
の試算
損金算入限度額 @189千円 × (12月/36月)
= 63千円
損金不算入額 @189千円 - @63千円
= @126千円 … (3)
損金不算入額が
最少となる選択
数量14について中小企業者の特例
数量1について3年一括償却
中小企業者の特例
中小企業者の特例に係る取得価額の合計は2,896千円
損金不算入額 @126千円 × 数量1
= 126千円
126千円

解説

器具備品①(電子計算機)と器具備品②(冷暖房用機器)について、当期償却費のうち、損金算入限度額を超える額が損金不算入となる。

本問の法人は、資本金の額が1億円以下であるため、中小法人に該当する。

〔1〕減価償却の方法

資産の種類に応じて、減価償却の方法を判定する。

  • 建物・建物附属設備・構築物 … 定額法
  • 機械装置・車両・備品 … 定額法または定率法
    (償却方法を選択しない法人の場合は定率法)

減価償却方法についての届出は行われていない。
器具備品①の償却方法は定率法となる。
器具備品②の償却方法は定率法となる。

〔2〕計算の基礎となる数値の算出

資料で与えられた情報を整理して、以下の計算に必要となる数値を準備する。

償却率
器具備品①の耐用年数は4年であり、定率法の償却率は 0.500
器具備品②の耐用年数は6年であり、定率法の償却率は 0.333

取得価額(単価と数量)
器具備品①の取得価額は、単価189千円 × 数量15 = 2,835千円
器具備品②の取得価額は、250千円

当期供用月数
当社の事業年度は4月~3月である。
器具備品①の供用月数は1か月
器具備品②の供用月数は12か月

当期償却費
器具備品①は、取得価額の全額が当期に償却されており、単価189千円 × 数量15 = 2,835千円
器具備品②は、取得価額の全額が当期に償却されており、250千円

〔3〕特例の選択可否

少額の減価償却資産に関する特例について、それぞれの選択の可否を確認する。

少額減価償却資産
取得価額が10万円未満または使用可能期間が1年未満の減価償却資産は、その事業年度に全額を損金算入できる。
器具備品①の取得価額は100千円を超えており、この特例は選択できない
器具備品②の取得価額は100千円を超えており、この特例は選択できない

一括償却資産
取得価額が20万円未満の減価償却資産は、一括して3年(36か月)で償却するものとして当期分を損金算入できる。
(※当期に損金算入できる割合は(事業年度の月数÷36)であり、供用月数に応じた月割計算はしない。)
器具備品①の取得価額は200千円未満であり、この特例を選択できる
器具備品②の取得価額は200千円以上であり、この特例は選択できない

中小企業者等の少額減価償却資産の特例
青色申告の中小企業者等は、取得価額が30万円未満の減価償却資産について、その事業年度に全額を損金算入できる。
(※ただし、取得価額の合計が限度額300万円を超えない範囲に限る。)
器具備品①の取得価額は300千円未満であり、この特例を選択できる
器具備品②の取得価額は300千円未満であり、この特例を選択できる
対象となる取得価額の合計は限度額3,000千円を超えているから、この特例ですべてを償却することはできない。

〔4〕償却方法ごとの試算

選択可能な償却方法ごとに、それぞれを選択した場合の損金不算入額を試算する。

個別償却
器具備品①の損金算入限度額は、数量1あたり取得価額189千円 × 償却率0.500 × 供用月数割合(1/12) = 7.875千円。
当期償却額から差し引いた損金不算入額は、数量1あたり189千円 - 7.875千円 = 181.125千円 … (1)
器具備品②の損金算入限度額は、取得価額250千円 × 償却率0.333 × 供用月数割合(12/12) = 83.25千円。
当期償却額から差し引いた損金不算入額は、250千円 - 83.25千円 = 166.75千円 … (2)

3年一括償却
器具備品①の損金算入限度額は、数量1あたり取得価額189千円 × 月数割合(12/36) = 63千円。
当期償却額から差し引いた損金不算入額は、189千円 - 63千円 = 126千円 … (3)

〔5〕損金不算入額が最少となる選択の決定

当期の課税所得の金額が最も少なくなるようにするため、損金算入額を多く(=損金不算入額を少なく)する方法を選択する。
試算の結果と特例の適用限度額を考慮して、損金不算入額が最少となるような償却方法の組み合わせを判断する。

  • 中小企業者等の少額減価償却資産の特例の対象となる少額資産の取得価額の合計は3,085千円であり、限度額を85千円超過している。
  • 器具備品①のうち数量1を対象からはずす(A案)と取得原価は2,896千円、器具備品②を対象からはずす(B案)と取得原価は2,835千円となり、いずれも限度額に収まって全額を損金算入できる。よって、A・B両案を比較して損金不算入額の少ないほうを選択する。
  • A案の場合、器具備品①のうち数量1は、個別償却または3年一括償却をする。(1) > (3) より、(3)126千円がより少ない損金不算入額となる。
  • B案の場合、器具備品②は、個別償却をする。(2)166.75千円が損金不算入額となる。
  • (3) < (2) より、損金不算入額が少ないのはA案である。

以上より、「器具備品①のうち数量14と器具備品②を中小企業者等の少額減価償却資産の特例で償却し、器具備品①のうち数量1を3年一括償却する」方法を選択する。

〔6〕損金不算入額の算出

選択した償却方法に従い、損金不算入額を計算する。

器具備品①のうち数量14と器具備品②は、全額が損金算入される。
器具備品①のうち数量1の損金不算入額は、 (3) × 数量1 = 126千円 である。

したがって、損金不算入額は 126,000円 となる。

正解 1